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加藤健一事務所 第95回公演 「女学生とムッシュ・アンリ」

「女学生とムッシュ・アンリ」 L'Etudiante et Monsieur Henri
(2015年12月2日~12月13日 紀伊國屋サザンシアター劇場)

独り身の老人、アンリ(加藤健一)の家を突然女子大生が訪ねてくる。
彼女はコンスタンス(瀬戸早妃)と名乗り、ルームシェアの広告を見てやってきたという。
アンリの息子ポール(斉藤直樹)は、母が亡くなってからずっと一人暮らしの
父を案じて、ルームメイト募集の広告を出していたのだということがわかる。
部屋が気に入ったコンスタンスだが、ピアノを触るなというアンリの警告を無視し、
ピアノの演奏をしようとして、部屋を追い出されそうになり、なんでもすると申し出る。
アンリは気に入らない息子の嫁、ヴァレリー(加藤忍)を追い出すことに
コンスタンスが協力して、息子夫婦が別れるように仕向けてくれれば、
3か月の家賃をタダにしようというのだが…。

少し前に見た加藤さんの年収めのお芝居。レビューが遅くなってしまいましたが、
どうにかぎりぎり年内、自分の誕生日にアップ。危ないところでした。

私はハリウッドに毒されたエンタメ上等人間なので、わかる人だけわかればいいみたいな、
欧州系(おもにフランス)のアート系のストーリーがあまり得意ではありません。
この作品は加藤さんの事務所での初演で、今まで見たことがない作品だったので、
どんなものなのかわからないで足を運んだのですが、変なフランス風のひねりがなくて、
素敵な作品だったと思います。やさしいけれどほろ苦い人生を思わせる舞台でした。

人生は成功するか、失敗するかで決まるわけではない。
このセリフには、何かずしんと来るものがあって、なかなかレビューがあげられませんでした。
以前にも書いたような記憶があるのですが、勝ち組・負け組とか、格差社会とか、
何か人をあっと言わせないとだめというか、人より(実際にではなくても)
秀でていなくては駄目だとか、なんだかぎすぎすした時代ですよね。
Facebookとかもそうだと思うんですが、「素敵な自分」を演出することが、
日常である人がかつてないほど多い時代だと思います。

私は人様にお見せできるような素敵な日常なんてこれっぽっちも過ごしてないし、
自分をよく見せることにも、自分の生活のブロードキャスティングにも興味がないので、
持ってるのはこのブログくらいで、私生活についてはほとんど書きません。
Facebookは仲のいい人の誕生日の連絡があったときにメッセージを書くくらいで、
他人のポスティングも基本読まないので、まだましなほうかなぁとも思いますが、
そうじゃない人の疲れは、私の比ではないだろうと思います。
そんなこと関係なしに生きている私だって、かなり疲れてるくらいですから。

誰にでも承認欲求ってありますよね。いい人だって思ってもらいたいし、
負け組と思われるよりは、あの人は成功してるって思われたい。
でも、結局それ自体が、自分の幸せを遠ざけているのだとしたらどうなんだろう。
「あの人に認めてもらう」ことでしか自分の幸福が満たされないのだとしたら、
それは本当の幸せなのかどうか。

昨日、大学の心の置けない友人と4人で忘年会をしました。
その中に本当に頭がよくて、苦労もたくさんしてきたきれいな女性がいて、
毎回会うたびに、彼女にはいろいろと言われるのですが、昨日もバッサリと、
「他人軸で幸せを測ってるうちは本当に幸せにはなれないから、
他人を喜ばせることをやめて、自分が100%幸せになることを追求しろ」と言われました。
すごくそれは胸に刺さる言葉で、いろいろと考えさせられました。

コンスタンスは父親に認めてもらいたいという思いが強くて、
彼女自身の心が求めるものを失っていた。それをアンリは見抜いていて、
彼女に自分の心の望むままに生きろということを教えてくれる。
たとえ父親が認めてくれなくても、アンリはコンスタンスのことを認めているし、
そんな自分を自分自身が認めてやるべきだということを。
そしてその言葉は、アンリ自身すらをも目覚めさせる。

人の承認なしに、ひとりで立つって、難しいことですよね。
誰だって安心したいし、大丈夫なんだって誰かにいってもらいたい。
でも、そんな不安すらを脱ぎ捨てて、荒野にひとり立ったとき、
やっと人は自由になれるのかもしれません。
他人がなんといおうとも、自分にとってはこれが幸せなのだと言い切れる強さ。
それを持った人にしか、見えない世界がそこには広がっているのかも。

難しいけど、でも、来年は何かを言い訳にして、自分の幸せを追い求めることを、
阻害することはしたくありません。どこまでそれができるのかはわからないけど、
自分が変われるように努力をしてみたいと思います。

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BLISS企画 「花いちもんめ」

「花いちもんめ」
(2015年10月8日~10月11日 下北沢駅前劇場)



四国で女一人、遍路旅をしているすず(加藤忍)は、後ろから誰かにつけられている気がして、
不安を隠せない。山道で行き合った旅人に、彼女はその昔、まだ若かった頃、
自分が満州にいたときの物語を語り聞かせる…。

とてもどっしりとした作品だったので、自分の中で内容を咀嚼するのに、
数日かかってしまいました。千秋楽の11日に見に行ったのですが、
本当に涙、涙で、なんとなく「そんなことなのでは」という予感はあれど、
やはり言葉でその結末を聞くというのは、胸に受ける衝撃が違っていて、
いろいろと考えてしまいました。

追われゆく 襤褸の群れは声もなし せめて摘みたや 花いちもんめ
この歌の静かなすごみというか、たたずまいがこの作品を表していたと思います。

忍ちゃんは本当に大好きな大好きな女優さんで、いつも加藤健一さんの舞台で、
ご活躍されているのを拝見していますが、ひとり芝居を見させていただくのは、
今回が初めてでした。この作品は再演なのですが、初回に公演されたときは、
見に行くことができなかったので。いつもの彼女が演じている役は、
若い女性の役が多くて、きれいで、はつらつとしたものが多い印象です。

今回の「花いちもんめ」の役は、どんなに若くても60代かなというくらいの老女で、
見た目はいつもと同じく若々しくおきれいなのですが、
そこは彼女の言葉で語られる、まだ自分が夢に満ちていられたころの、
満州の世界の姿を映していたと思います。でも、声に幅があって、
物語が後半、少しずつ核心に近づいていくに連れて、
ああ、この人は心が事件によって本当に年老いてしまったのだと、
切々と訴えてくるものがあって…。
「知っていたのです!」という忍ちゃんのふり絞るような叫び声が耳から離れません。

花いちもんめって、小学生のころ、遊んだ記憶がありますが、
これも残酷な遊びですよね。両方が勝ったり負けたりしているうちはいいですが、
どんどん人が減っていくと、残された子供は、自分が友達に好かれていないと、
わかってしまいますし、子供というものの無邪気な残酷さをくすぐる遊びのような気がします。
そんな子供のころの記憶もよみがえってくるような作品でした。

子供って、大人が思っているよりも敏いもので、
小さくても、意外と色々なことがわかっていると思います。
私は自分が7歳の時に母が離婚して、女手一つでずっと育てられてきて、
かなり貧しい環境で育ってきたので、なんとなく撫子の気持ちがわかる気がします。
自分がわがままを言ってはいけないとそのころから自制していましたし、
何かほしいものがあっても、それを自分がいったら、
お母さんが困るだろうと思うことは我慢するという癖が小さいころからついていました。
撫子もきっと、満洲男のためにお母さんがせずにはいられないことを、
わかっていたけれど、それをお母さんにいったら、お母さんを困らせ、
悲しませるということがわかっていたから、いえなかったんでしょうね。

この物語がとじられたあと、すずは、撫子はどんな気持ちで日を過ごすのでしょうか。
すずはきっと黄泉の国まで自分の秘密を持っていくのでしょうし、撫子は…。
アフタートークで少し心軽くさせていただいたのですが、
それでもやはり重い作品で、うまく自分の言葉をまとめることができません。
なんだかこうやって書いてみても、自分でもよくわからなくなってきましたので、
この辺にしておこうかと思います。

次はクリスマスコンサートですね。去年はサマーだけお伺いして、
クリスマスは卒論の追い込みでいけなかったので、今年は楽しみにしています。

テーマ : 演劇 - ジャンル : 学問・文化・芸術

加藤健一事務所 第94回公演 「滝沢家の内乱」

「滝沢家の内乱」
(2015年8月26日~8月30日 下北沢本多劇場)



『南総里見八犬伝』の作者である滝沢馬琴(加藤健一)の息子、宗伯(風間杜夫)のもとへ
お路(加藤忍)が嫁いでくることに。
有名な戯作の作者である馬琴先生のお宅ということで、楽しみにしていたお路だが、
病弱な夫と、意地悪な姑のお百(高畑淳子)に困惑しながらも、
少しずつ滝沢家の嫁として、薬の作り方を覚えたりと、お路はがんばっていた。
だが、年をとり、馬琴の目がかすむようになってきて、小説家として、
一家を支える大黒柱の危機に、お路は立ち上がるのだが…。

2011年に初演をした「滝沢家の内乱」の再演、本多劇場の初日にお邪魔してきました。
知らぬ間に劇場のリフォームがされており、ロビーのソファや、
客席のシートなどが新しくなっていて、びっくりしました。
そして、初日だったこともあり、清水明彦さんや日下由美さんを客席で発見。
あと、たぶん小田島先生(息子さんのほう)と思われる人物も。
ほかにも舞台関係者と思われる方たちを何人か見かけましたが、
何しろ舞台は加藤さん一筋で浮気をしてない(要は加藤さんの事務所の作品以外、
舞台を見に行っていない)ので、同事務所の作品に出ていない俳優さんや、
普段は表に出てこない演出家や脚本家の皆さんのお顔はわからないので、
わかりませんでした!(開き直りか)

ともあれ。この作品を見るのは2度目で、前回のレビューを見直してみたのですが、
改めて読むと、この作品の表の部分しか、前回は見えてなかったんだなと気づき、
正直、結構唖然としました。初演を見に行った時期が、自分のプライベートが
ある程度安定していたときだったというのもあったのかもしれませんが、
今回、この作品を見ていて何か、とてもいろいろと考えさせられるものがありました。

前回、初演を見たときには、心に伝わるほろ苦いものはあるけれど、
コメディ色の強い、明るい作品だと思っていたようです(自分のレビューによれば)。
でも、昨日この作品を見ていて感じたのは、砂糖でコーティングされているけれど、
この作品の芯はやはり人間ドラマで、ある種の悲しみを帯びた作品だということでした。

自分が年を重ねたというのもあるのかもしれません。
自分が今、体調と心調があまり思わしくない状態だったというのもあるかもしれません。
でも、今回この作品を通じて、深く私が感じたのは、
生きてゆくというのは、けして楽なことではなくて、苦しいことなんだけれども、
ひと筋の光を求めて、自分の生きた証を立てるために、
つらくてもみんな頑張って前に進んでゆくのだということ。
それが人というものであり、心なのだということでした。

今の時代とか言い出すと、本当に年を取ったなと思ってしまうのですが、
自己責任なんて言葉が幅を利かせ始めたのは、自分のとった言動の責任を、
きちんと取らない大人が増えたからだと思います。
大人であるということがプラスではなくて、いつまでも子供でいたい、
そして子供でいることを許されてしまう時代にあって、
自分はどういう風に生きていきたいのか。もし子供を持ったなら、
どう育てていくのかとか、そんなことを考えてしまいました。

心に浮かんだのは、この事務所の一番大好きな作品である、
詩人の恋」の核となるコンセプト、「喜びと悲しみ」の組み合わせでした。
前半嫁いできたばかりのお路は、本当に明るくて、特に今回は演出のせいもあるのか、
やや能天気な軽さ(悪い意味ではありません)を強く打ち出していました。
仲のいい家族で大切に育てられた二十歳やそこらの若い女性が、
何もわからずに嫁いできて、一所懸命に働いて、混乱もするし、
不満もあるし、それでも必死でがんばって。

でも、そんな明るい彼女が、夫の死を迎えたときから、違う表情を見せるようになるのです。
声のトーンも変わる。髪型も変わる。メイクも変わりました。
それが彼女が大人になったということでもあったのでしょう。
舞台の始まった最初のころ、少し忍ちゃんの演技が走っている感じがしたのですが、
後半そこに影が差したことで、「喜びと悲しみ」が立体感を持って、
浮き彫りになってきて、そういうことだったのかと、そこでようやく理解したのです。
(素人なので、仕方ないのですが、本当におこがましいことを思ったと思います)

お路の覚悟と、その覚悟を全力でもって受け止めた馬琴。
ふたりの本気が向き合って、ぶつかりあって、昇華した。
最後の30分くらいは、なんだか涙でぼんやりと舞台が曇って見えました。
すごく、すごく、素敵な舞台だったと思います。
4年かかって、やっとこの舞台の本当の良さがわかったのかと。
自分の至らなさに残念さを覚えながらも、気づけて良かったなと思えました。

しかし今回、忍ちゃんの衣装の早変わりがすごかったです。
あの着物、どうやってるんでしょうね? なかなかのみものでした。
そして、和の作品なのですが(前回もそうだったのかもしれませんが)、
実はクラシック音楽が結構使われていて、和の作品とクラシックって、
こんなにあうんだなぁと、感心しながら聞いていました。
全部の楽曲はわからなかったのですが、私が個人的に一番いいなと思ったのは、
前半、まだ話が明るいところで、何気なく使われていた、
フォーレの「夢のあとに」でした。ヴァイオリンの響きが甘く切なくて、
そのあとに訪れる悲しみや苦しみを予感させるようで、聞き入ってしまいました。

あとは、舞台が終わった後で、忍ちゃんがすぐ表に出てきて、
10月にやる一人芝居のチラシを配りに来てくださったのですが…。
(一人でこういうの喜んでると、本当にストーカーみたいに聞こえますが、
けして危ないファンではないのであしからず)
忍ちゃんが私の顔を覚えてくださったらしく、「いつもありがとうございます」と
いってくれましてーーー
(涙)、その場ではあやしい人になってしまうので、
会釈をして出たのですが、とても深く感激した次第です。
まあ図々しく一緒に写真撮ってもらったりとかしているので、
ああ、あの図々しい人かと思われてるだけかもしれませんが、それでもいいです。
加藤さん同様、これからもずっと応援しています!

一応興味のある方のために、「夢のあとに」のリンクも載せておきます。


加藤健一事務所 第93回公演 「バカのカベ」

「バカのカベ」 Le Dinner de Cons
(2015年4月24日~5月3日 下北沢本多劇場)

 

敏腕編集者のピエール(風間杜夫)は、毎週火曜日に仲間と持ち回りで、
そこらでは見かけない本物のバカを連れてきて笑いものにするという、
恒例のパーティーを開いていた。今夜はゲストとしてフランソワ(加藤健一)という、
国税庁勤務の男を招くことになったのだが、ピエールはぎっくり腰になってしまう。
妻のクリスティーヌ(日下由美)はそんなピエールの冷たい性格にあきれ果て、
家を出て行ってしまう。妻を親友に寝取られてしまったというフランソワの話を聞き、
自分が結婚する前にクリスティーナが付き合っていた、かつての親友、
ルブラン(新井康弘)のもとへ行ったのではないかと疑心暗鬼にかられたピエールは、
ひと芝居を打つことになるのだが…。

2012年に初演をした「バカのカベ」の再演ですね。
今回も前回同様、楽しく笑わせていただきました!
ちょっと最近、プライベートでいろいろとありまして、
毎日がかなりきつい状況なので、こんなふうに何も考えないで、
ただ素直に笑えるというのは、本当にありがたい限りです。

前回見たときに、忍ちゃんの演じるマルレーヌのウィッグが取れるシーンが、
演出なのか、アクシデントだったのかわからなかったとコメントしたのですが、
どうやらこれも演出だったということが今回わかりました。
今回も忍ちゃんはおバカだけどセクシーでかわいい小悪魔役を熱演でした。

でもでも、何よりも、私の今回のお目当ては清水明彦さんだったのです!
去年のサマーコンサートですっかり大ファンとなってしまい、
一度だけその後も、こちらの事務所の作品を見に劇場に足を運んだ際に、
たまたま観客としていらしていた清水さんにもお会いして、
勝手に挨拶をしたという(先方には迷惑な話)過去がありますが、
今回のステージでの再会は本当に楽しみにしていました。

ピラニア!

もうこれ、最高でしたね。思わず涙が出てしまったほどです。
こういうわけのわかんないギャグに、わけのわからない役。
素の清水さんがどういう方なのかはもちろん私は知らないのですが、
本当にこんな変人なのではないかと思いたくなってしまう説得力。
ああ、また清水さんにお会いできるのが楽しみだなぁ。

今回もイノセントな間抜けのフランソワを加藤さんはかわいく演じていらっしゃいました。
こういう人がそばにいたら、疲れもするのでしょうが、
ある意味癒されるのかもしれず…。なんともいえません。
でも、ピエールみたいにずるがしこく立ち回って、人を馬鹿にして過ごすくらいなら、
たとえ周りには間抜けに見えたとしても、フランソワのように、
まっすぐに生きていくほうが私はいいかなと思います。

ともあれ。
連休前のいい息抜きとなりました。ありがとうございます。
次回は「滝沢家の内乱」の再演だそうです。
こちらも楽しみにしております。

テーマ : 演劇・劇団 - ジャンル : 学問・文化・芸術

加藤健一事務所 第92回公演 「ペリクリーズ」

「ペリクリーズ」 Pericles
(2015年2月19日~3月1日 下北沢本多劇場)



ツロの領主ペリクリーズ(加藤健一)は、絶世の美人であるという王女に求婚するため、
アンティオケを訪ねる。だが、その王であるアンタイオカス(山崎清介)は、
その美しい王女(加藤忍)と近親相姦の関係にあった。そのことを知ったペリクリーズは、
身の危険を感じてツロを出てタルソへと航行する。タルソにて小麦を渡す代わりに、
身の安全を願うペリクリーズに、太守のクリーオン(畠中洋)は忠誠を誓う。
やがてアンタイオカスに居所を察知されたペリクリーズは、その地を離れ、
また航路につくのだが…。

久しぶりの加藤さんのお芝居です! いや、前回の「ブロードウェイから45秒」も、
実は見に行ったのですが、個人的な事情で記事を上げる余裕がありませんでした。
今回は長らくお世話になっている加藤さんの事務所ですが、
私は初めてのシェイクスピアということで、ちょっぴり緊張していましたが、
その不安をさらりと解いてくださるのは、いつもの加藤健一マジックでした。

シェイクスピアって、やはり言い回しがとても難しくて、
直喩、暗喩などの比喩表現が多く、気軽に見てはいけないものという思いがありました。
「ロミオとジュリエット」や「マクベス」など、有名な作品は知っていますし、
文章の形であれば、戯曲を読んだこともあるのですが、活字であればこそ、
すぐにわからなくても、辞書も引けるし、前のページに戻ったり、
何度も反芻することで入ってくるものもあるのですが、舞台としてだと、
生で、巻き戻しが聞かないので、ちょっと敷居が高い印象があるんですよね。
でも、今回の「ペリクリーズ」はそうではありませんでした。

同じ役者さんが何役も演じるし、場面や国の転換も早いので、
のんびり反芻する時間はありません。でも、話の筋はかなりクリアで、
主役であるペリクリーズの数奇な運命に、どんどん引き込まれていきました。
私はこの戯曲のことは知りませんでしたし、内容の予習もせずに行ったので、
どのような結末が用意されているのかは、知りませんでした。
創作ならではのご都合主義は、なかったとは言えません。
でも、それでも、最後にシェイクスピアがペリクリーズに見せた希望は、
胸に明かりを灯すものだったし、私は思わず涙してしまいました。

つらいことって、いっぱいありますよね。
もちろんこのペリクリーズのような、とんでもない不運に出会うことなど、
今の日本で生きていれば、そうそうはないだろうと思います。
でも、それはあくまでも比較の問題であって、たとえ小さなことであっても、
その人それぞれにとっては、やはりつらい気持ちはおんなじで、
その大小を他人がどうこう言うことはできないと思うのです。

だけど、やっぱり人の善意を信じたいし、自分の善行を信じたい。
情けは人のためならずではないけれど、たとえ損に思えても、
自分の心がまっすぐでいられる道を選びたいなと…思った次第です。
因果応報はあるのだと、心に留めておきたいと思います。

さて。次回は「バカのカベ」の再演の様子。
コンサートですっかりファンになってしまった、清水さんに期待しています!

加藤健一事務所 第90回公演 「If I Were You~こっちの身にもなってよ!~」

「If I Were You~こっちの身にもなってよ!~」 If I Were You
(2014年8月9日~8月24日 下北沢本多劇場)



ある中流家庭。夫のマル(加藤健一)は家具店の支配人をしている。
妻のジル(西山水木)を尊重せず、裏では化粧品売り場の女性と浮気中。
息子のサム(松山泰一郎)のことを一方的に自分の秤で図ろうとするため、
ろくにコミュニケーションも取れていない。娘のクリッシー(加藤忍)は、
会社の部下のディーン(石橋徹郎)と結婚し、一男を設けている。
すべてを一方的な考え方で進めようとするマルに、愛想をつかしかけているジルは、
ある晩、きちんと話をしようと、夜寝る前にマルに伝えるのだが、
彼はめんどくさがり、そのまま寝てしまう。絶望したジルは神に祈るのだが…。

あ~~~~~~~~、おぞましい!!!
いやいやいや、久しぶりのド直球のコメディ。本当に笑わせていただきました。
上記のセリフが加藤さんの口から出てきたときは、もう大爆笑でした。
いただいていたチラシからも、マルとジルの魂が入れ替わるという、
プロット的にはある意味、使い古された内容であるのは知っていたのですが、
小説も舞台も映画も、要はその中身がどう料理されるかですよね。
とってもおいしく仕上がっておりました♪

私は女性なので、当然にジルやクリッシーの視点から舞台を見るわけです。
ですので、男性の視聴者とは、微妙に違う感想になっているのでしょうけど、
両方の側からの話を描いているので、男女の理解の話は普遍的なことですし、
どちらであっても、必ずある程度の共感ができる内容になっていると思います。
そしてそれが、説教的じゃないから、嫌味じゃないのね。

このblogの中でも、何度かちょろちょろっと話はしているのですが、
私の仕事は人事です。なので、会社で人にかかわることを生業としているのですが、
その中で本当に感じるのは、人を成長させたければ、ほめるのがとても大事だということ。
もちろんなんでもかんでも、お世辞でもいいからほめろということではありません。
でも、何かがよくできたとき、けしてほめ言葉をケチってはいけない。
人間ですから、物事には得意・不得意があって、上手にできることと、
あまり上手にできないことがあります。でも、何かができてないからといって、
できていることをほめるのをやめるべきではありません。

きみはAはできているけど、Bができていない。だからまだダメだ。
きみはAはよくできている。でもBはまだ足りないから、同じくらいできるよう頑張ろう。
この2つは、基本的に同じことを相手に伝えています。
でも、言われた時の印象が、まるで違いますよね。上の文から受ける印象は、
できていることはあっても、できてないことがあるから、総合評価はバツ。
下の文章では、足りないところもあるけれど、できているところは評価されている。
自分が言われて、やる気が出るのは、どちらの言われ方でしょうか?

もちろんどちらであっても、相手の成長を望んでのアドバイスだと思いますが、
人間、ネガティブなことを言われ続けると、自分はダメなのだと思い込んでしまう。
そして、ほめられれば、自分に自信がつくし、その自信がアクションを変え、
それまでできなかったことができるようになってゆく。
この舞台で言えば、マルは上のタイプ。そしてジルは下のタイプですよね。
北風と太陽ではないけれど、最終的に大きな成果を引き出せたのは、
マルの中に入ったジルでした。

そして、ほめ言葉のいいところは、いい流れを生み出すこと。
人間、相手によくしてもらえば、その人に対する好意を持ちますし、
そうするとその人に何かしてあげたいと思うもの。
それがマネージャーという立場に立つ人の心得なんじゃないのかなと、
私は勝手にですが、思っています。
ジルが支配人になったほうが、お店の売り上げが上がりそうですね。

そんな仕事の話はさておき。
入れ替わった二人の言動がとにかくおかしくて。細かいところまでひねりが効いています。
ジルになってしまったマルに、ジルは好きなものを着ればいいというのですが、
マルが選んだ服装がブライトオレンジのパンツにスカーフのような、
柄物のカットソー。最初にその姿で彼女(彼?)が出てきたとき、
私はぎょっとして、「えっ、その恰好はちょっと…」と思ったのですが、
クリッシーからも、ジルからも、息子のサムからさえも、
そこに突っ込まれて、でも、マルとディーンだけは、その組み合わせの悪さというか、
趣味の悪さに気が付かないというのは、地味におかしかったです。

ディーンの暴力疑惑は、そこまで本格的なDVってわけではなさそうでしたね。
でも、赤ちゃん産んだばかりの奥さんを…ホント、我慢しろって話で。
あと、お芝居に向き合うサムもかわいかったです。あんなに反対していたのに、
彼が一所懸命に演じるのを見て、すっかり感化されて、
無神経に邪魔をするディーンを殴ってしまったのには気分爽快。
最終的に二人が、お互いにお互いの苦労と喜びを理解して、
元に戻れたのは、新しい一歩を感じられて、すごくよかったです。
それぞれを尊重するために、カップルや家族の中で、
こういうことを定期的にできたら、争いが減るのかもしれませんね。

でも本当に今回は、加藤さんと西山さんの素晴らしい演技にノックアウトでした。
ただ単に男女の中身が入れ替わったというだけではなくて、
中に入っているのが、この特定の人物(マルとジル)であるというのが、
観客に伝わらなければいけないわけで、しまいには相手の声が、
もう一人の人の声で聞こえてくるような錯覚を受けました。
加藤さんと西山さんに、心からブラボーです!

加藤さんのお芝居を見に来ると、時たま役者さんが見に来ていらっしゃる回に、
運よく当たる時があるのですが、今回はなんと清水明彦さんがいらしてました!
先方は私のことなんて、まったく覚えていらっしゃらなかったと思うのですが、
前回のコンサートで写真を撮ってくださったことをお礼申し上げました。
気さくに笑顔でお話ししてくださって、本当に感謝しています。
ますます清水さんのファンになってしまいそうです

次回は「ブロードウェイから45秒」という作品のようです。
これは加藤健一事務所では初演じゃないのかしら。
10人を超える役者さんが出演する舞台のようなので、
かなりダイナミックなものになるのか? 次回も楽しみにしています!

テーマ : 演劇・劇団 - ジャンル : 学問・文化・芸術

Bliss Friends 加藤忍 サマーライブコンサート

26日(木)、加藤忍ちゃんのライブコンサートに行ってきました!
私は加藤健一さんのお芝居は、「煙が目にしみる」の初回公演からですので、
2000年からずっと、数作を除きほぼ全部通っているのですが、
こういったコンサートは初めての参加(?)でした。
忍ちゃんによると、今回でこのコンサートは4回目とのことです。

舞台と違うので、どんななんだろうと、期待と不安もあっていったのですが、
一言でいって、本当に楽しかったです!
知らない楽曲も多くありましたが、スタンダードといえるような有名な楽曲も多かったですし、
何しろ出演者の皆さんのパフォーマンスが楽しくて、
ダンスがあったり、弾き語りがあったり、トークでは加藤健一さんが、
舞台の世界のお話をしてくださったり、みんなを飽きさせない作りになっていて、
休憩も含めて、終わったときにはもう9時半を過ぎていたのですが、
びっくりするほどあっという間でした。

「Can't Take My Eyes Off You」でスタートして、忍ちゃんが登場、
そしてその日の出演者の皆さんがステージに上がって、一緒に歌う様子は壮観で、
それだけでわくわくする雰囲気が一杯でした。
どんなステージになるのかなと、見ながら本当にどきどきしましたね。
歌も明るいチョイスで、みんながよく知っている歌だったので、口ずさみやすかったです。

私が一番好きだったのは、清水明彦さんの「君は薔薇より美しい」でしょうか。
歌がうまいというだけではなくて、ちょっとしたふりやしぐさがチャーミングで、
うっとりと聞きほれてしまいました。
(加藤さんが毎回清水さんが「やってくれる」と連発してましたが、その意味も納得です)
普通に舞台でお芝居を見ているときとは全然違うので、
そのギャップに私もすっかり乗せられて(?)しまいました。
何よりあの笑顔が素敵なんですよね~。

加藤忍ちゃんのパフォーマンスで楽しかったのは、高畑こと美さんと一緒に歌われた、
百恵ちゃんのメドレーです。ふたりがすごく楽しそうにしていたのと、
びしっと決まった振り付け、そして(ここでもまた)おいしいところを持っていた清水さん。
ノリのいいメロディラインに、美人さんが二人で歌うので、目にも眼福でしたね。
あとは、「月のワルツ」というジャズ?っぽい歌もすごく素敵でした。
忍ちゃんには、なんとなくですが、ドラマチックな歌がよく似合うように思います。

加藤健一さんは、途中歌われた「コメディアン」という作品が楽しかったです。
でも、一番よかったのは、最後にアンコールで歌われた「マイウェイ」でしょうか。
本当に心に沁み入る歌声で、なんともぐっと来ました。
やっぱり加藤さんの声って、深くて本当に素敵です。
お話されているときの声も大好きですが、歌っているときのビブラートは、
まるで海に抱かれているような気分になりました。

日下由美さんも何曲か披露されたのですが、忍ちゃんとデュエットされた、
ユーミンの「真夏の夜の夢」が妖艶な感じで、私はよかったですね。
すごくおきれいな方なので、少し近寄りがたいような歌の雰囲気もかもし出せていたと思います。
黒いドレスに途中で着替えられたのですが、日下さんは色白なので、
よりそのコントラストで華奢に見えて、美しかったです。

高畑さんは先に書いた忍ちゃんとのデュエットもよかったですし、
最後のほうで歌われた、イタリア語の太陽のなんとか(曲を覚えられなかった)という歌が、
とても堂々とした歌いっぷりで、すっかり魅了されました。
清水さんと一緒に歌われた、カーペンターズの「Top of the World」もよかったです。

本多由佳ちゃんは、「Vacation」ともう一曲何かとのマッシュアップを歌われたのですが、
「Vacation」での声域の広さにびっくり! 服装もキュートで、とても歌の雰囲気とあっていました。
彼女はB*WichedのMickyとかを歌ったら、すごくはまるんじゃないですかね。
出演者ですが、お客さんのお席へのご案内などもしていただいて、
まめまめしくしていらして、とてもかわいらしい方だなと思いました。

有馬自由さんは「か」なんとかという打楽器(何度もいっていたのに、名前が覚えられなかった)を
お持ちになり、皆さんの伴奏をされていました。惜しむらくは、私のいた席からは、
完全に死角になるところにずっといらっしゃったので、たぶん皆さんと一緒に歌ったりも
されていたと思うのですが、どの曲を歌われていたのかがわかりませんでした。ごめんなさい。
でも、リリースされたCDのお話をされていて、トークがお上手だなと感心しきりです。

ゲストとして、丸山厚人さんもいらっしゃっていて、ギターとハーモニカの弾き語りで、
「乾杯」を朗々と歌い上げられました。これは本当にすごくて、
語彙がなくて、こんな表現で大変お粗末なのですが、違うところに来たような気分になりました。
そして、演出家の鵜山仁さんもいらっしゃって、オペラ? かしら? 
何かそういうクラシックの声楽系の歌を歌われたのですが、もうまるでプロです。
なんで歌手やらないで、演出家をされているのですかと、聞きたくなるほどの腕前。
そしてピアノは鈴木永子さんがすべて担当されていました。

もうとにかく盛りだくさんで、本当にあっという間でした。
私は舞台も加藤さんのお芝居しか見てないですし、全然詳しくないのですが、
客席にはちらほら、そんな私でも役者さんだとわかる方がいらっしゃったり、
シェイクスピアの翻訳などをされていらっしゃる小田島雄志さんがいらっしゃっていたり。
ほかにもきっと、私が知らないだけで、業界関係者の方がかなりいらしていたようです。
詳しい方であれば、びっくりするような顔ぶれがそろっているのではないでしょうか(たぶん)。

というわけで、本当に素晴らしい時間をすごさせていただきました。
また次回、コンサートを行われるときには、ぜひまた来たいと思います。

写真を載せたのは、出演者の皆様が直筆で寄せ書きしてくださったポストカードです。
お客様ひとりひとりのために、こんなふうに気を遣ってくださるところがうれしいですね。
Welcome Post Card

あとはほかに何がいいって、その距離感の近さでしょうか。
先に申し上げた通り、私は15年ほど加藤さんのお芝居を見に来ているので、
古いとは言いませんがそこそこ年季の入ったファンの一人ではないかと思っていますが、
それでも、一度も役者さんたちとお話しをしたことはありませんでした。
でも、ここでは、開演前や終演後に皆さんが入り口にいらっしゃるので、
ほんの少しですが、お話しすることもできます。

またですが、私は図々しくも、今回は加藤健一さんと一緒に写真を撮らせていただきました。
すごく気さくに応じてくださって、しかも、カメラマンとして名乗り出てくださったのは、
清水明彦さんという贅沢ぶり。罰が当たりそう。
快く受諾いただき、お二人とも、本当にどうもありがとうございました。
とても素敵な記念となりましたことをお礼申し上げます。


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加藤健一事務所 第89回公演 「請願~核なき世界~」

「請願~核なき世界~」 The Petition
(2014年6月4日~6月17日 下北沢本多劇場)



ロンドンで暮らす夫婦、エドムンド(加藤健一)とエリザベス(三田和代)。
二人は水曜日の朝、リビングルームで新聞を読みながら朝食を取っていたが、
エドムンドは新聞の中に核兵器反対運動の請願広告が載っていたことに腹を立てる。
その名前を読み上げていると、中に妻のエリザベスの名前があることに驚き、
エリザベスを責め立てる。核兵器推進派のエドムンドは、元陸軍大将である自分の妻が、
反対派に名前を連ねているなんて、笑いものになるというエドムンドだが…。

久しぶりの加藤さんの公演です。
この作品、タイトルとチラシでいただいていたあらすじから予想していた、
硬い社会は作品とは一風違っていました。
物語の前半である重要なことがわかるのですが、その話が出てくるまでは、
かなり軽妙なやり取りが多く、内容は重いのにもかかわらず、
しっかりと笑わせるあたり、やはり加藤さんの事務所の舞台です。

やはり私は日本人なので、エリザベスと同じように、
核兵器については反対の立場ですが、保持するという点については、
(日本が持つべきだとは思いませんが)危険な国が保持している以上、
対等な立場で話をする土壌に立つためには、もっている必要があるという意味では、
エドムンドの説に賛成しています。微妙にダブルスタンダードにもなりますが、
銃を持って振り回している相手を説得するためには、
こちらも同じだけの武力を持っていなくては、なかなか難しい気がするからです。
ただし、持つだけであって、使うことはあってはいけないと思っています。

でもこれって、その人のポリシーというか、信念がかかわることですから、
なかなか人と議論するのは難しいトピックだと思います。
政治と宗教の話はするなというとおり、非常にタッチーな話題ですよね。
半世紀も結婚生活を続けてきたエドムンドとエリザベスでさえも、
お互いに引かずに、かなり深いところまで切り込んでいました。

未来を残しておくということ。
私たちはみんな、地球に仮住まいをさせてもらっていると思えば、
その場を汚したり、壊したりするということは、あってはならないことだと思います。
その精神をみんなで共有できるかどうかが、未来の子供たちへ、
残しておけるものを決めることになるのではないでしょうか。

この年になってくると、さすがにいろいろなことを考えるようになります。
死を意識するようになってきますし、それを考えるようになると、
どのようにして自分の人生をこれから生きていくのかとか、
何が周りのためにできるのかとか、そういったことを考えます。
自分が、ではなくて、自分以外の人たちのことが視界に入ってくる。
そうしたときに、やっぱり破壊の力は、禁忌の力かなと思います。

戦争は人間が人間である限り、なくなることはないでしょう。
でも、昔の戦争と違い、今の戦争は、その指令を出す人たちには、
遠い世界のことで、目の前で自分も傷つき、人が傷つくのを見ないので、
ヴァーチャルになりつつあるような気がします。
人に起こることは自分に起こることと同じことなのだと、
みんなが思えるようになればいいなと、理想論と知りつつも願わずにはいられません。

開場の少し前に劇場にいったのですが、なんと加藤忍ちゃんがいらしていました!
今月の末に3日間(6月26日~28日)、コンサートをするということで、
チラシを配りに来ていました。劇場の中から出てきた瞬間に、
ぱーっと周りが明るくなるような感じで、本当にかわいくて。
顔も小さいし、細くてスタイルがよくて、たとえ彼女が女優さんではなくても、
電車の中とかで見かけたら、ガン見してしまうだろうと思うほど、
きらきら輝くオーラがあります。大変ご迷惑だっただろうと思うのですが、
せっかくの機会だったので、ずうずうしく写真も一緒に撮っていただきました。
あと高畑こと美さんもいらしていましたよ(たぶん彼女だったと思います)。

忍ちゃんのコンサート情報は下のチラシをご覧くださいませ。
私は木曜日で予約しました。楽しみです♪

shinobu concert

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加藤健一事務所 第88回公演 「あとにさきだつ うたかたの」

「あとにさきだつ うたかたの」
(2014年3月12日~3月25日 下北沢本多劇場)

歴史博物館を毎日訪れる老人、藤崎静雄(加藤健一)。彼は毎日やってきて、
一日5回あるフィルムを毎回見て、帰ってゆく。彼が一体どういう人なのか、
受付の吉澤恵子(春芳)と園田香織(三戸亜耶)は、
想像を働かせるのだが、どういう人物なのかがさっぱりわからない。
静雄はフィルムを見ながら、その昔、故郷の静岡の海岸で、
父、隆(山崎清介)とふみ(加藤忍)と一緒に、
海がめの卵を見つけたときのことを思い出す。卵がかえる頃、
親子三人でまた海岸に戻ってきて、海がめの赤ちゃんが海に戻っていく様子を、
一緒に見ようと約束するのだが…。

今年1回目の加藤さんの公演。
いろいろと考えさせられる、さまざまなテーマが折り重なって、
レイヤーを作っている舞台でした。
とても静かで、でもやさしくて、そして切ない、胸がぎゅっとなる舞台。

この脚本を書いた山谷典子さんと私は同世代で、彼女ほどではないと思いますが、
私も祖母から祖父が戦争に行ったときの話を何度か聞いたことがあります。
でも私にとっては遠い世界で、曇りガラスの向こうからのぞいている、
そんな印象でした。でもこうして目の前に見える形で物語が展開すると、
またそれはそれで、違った感慨があります。

「難しいなあ。答えが決まってればいいのに」
静雄は言う。

誰が悪いわけではなくて、誰が正しいわけでもなくて、
ただ目の前のことに必死で、前に進んでいくしかなかった時代。
やるせないことも多くて、納得のいかないことばかり。
それでもただ、それを飲み込んで、進んでいくしかなかった時代。
私の年齢ですら、これがぎりぎり想像でわかるというところです。
私よりも若い世代の子たちにとっては、「なんで」という話でしょう。
いやならやらなければいい、よければ進めばいい、
今では当たり前のことが当たり前ではなかった頃の人たちが、
どうやって毎日を紡いできたのか。

ここ1年ちょっとの間に、祖父と祖母を立て続けに亡くして、
いろいろと考えることがありました。祖父はずっと病気だったので、
ある種の覚悟ができていたのですが、祖母は事故としか言いようのない、
本当に突然の死だったので、私たち家族の誰一人として、
その心の準備ができておらず、1年近くたった今でも、
どうしても納得のいかない出来事の一つです。そしてそのことをきっかけに、
何度も彼女の人生を私の視点から振り返ったりしたのですが、
昔の人は本当に驚くほど辛抱強くて、痛みに耐えてきていたと思います。

この作品に出てくる登場人物、ひとりひとりがそれぞれの悲しみを抱えていて、
それでも一所懸命に生きている。人間にできることはそれだけだ。
それしかできない。でも、それがどんなに大切なことか。
だから、ひとりひとりが宝石のように輝く。
ダイヤモンドじゃなくていい。自分だけの輝きを持つ人になりたいですね。

加藤健一事務所 第87回公演 「Be My Baby いとしのベイビー」

「Be My Baby いとしのベイビー」 Be My Baby
(2013年11月27日~12月8日 下北沢本多劇場)



1963年のイギリス。スコットランド貴族のクリスティ(加藤義宗)と恋をした
グロリア(高畑こと美)は、19歳の若さでクリスティと結婚することに。
唯一の肉親である叔母のモード(阿知波悟美)は心配をして反対するが、
恋が盛り上がっているグロリアは話を聞く耳を持とうともしない。
クリスティの親代わりでもあるジョン(加藤健一)はモードと犬猿の仲で、
結婚式のために一緒に過ごす時間が増えるのだが、喧嘩が絶えない毎日だった。
結婚後しばらくして、グロリアは妊娠するのだが、流産してしまい、
子供を望めない体になってしまう。そのときを同じくして、
親戚の女性が離婚をすることになり、生まれた子供を養子に出すと聞き、
神の啓示とばかりに、グロリアはその子供を養子に迎えることを決意する。
絶対安静のグロリアをサンフランシスコにはいかせられないと思ったクリスティは、
ジョンとモードに赤ちゃんを引き取りに行ってくれるように頼むのだが…。

今年最後の加藤さんの舞台。いいお芝居でした。
何より、ハッピーな気持ちで劇場を出られるのがうれしかった。
去年に引き続き今年も、家族に不幸が続いたり、
いろいろと個人的にしんどい1年でもあったので、
こういう明るい楽しい気持ちで一日を終えられるのは、本当にいいこと。

ラドウィグの脚本の舞台は、加藤さんのお芝居の中でもいくつか見ていて、
レンド・ミー・ア・テナー」や「特急二十世紀」も楽しかったですが、
中でも「バッファローの月」がお気に入りです。今回の作品も、
嫌な気持ちにならず、楽しく笑えてちょっとぐっと来るところもあって、
ああ、ラドウィグはいいなぁと改めて思いました。

人生って本当に何が起きるかわからないもので、いいことも、悪いことも、
予測できるときもあるけど、多くは思いがけないタイミングで起きるので、
なかなか心の準備ができないものだ。でも、だからこそ愛しい。
そんなふうに思える作品のひとつだったように思います。
ジョーとモードの珍道中は、神様からの素敵な贈り物だったのではないでしょうか。

私も40歳に近づこうとしている独身のひとりとして、そう思うのですが、
普段はそんなに自分が独身であることをどうと思うことはありません。
「誰かいたら」と思うことはもちろんそれなりにありますが、
仕事が忙しかったり、学校が忙しかったりすると、それどころではなくて、
口では「彼氏がほしい」だの「結婚したい」だのいってはいますが、
そこまで実のところ、激しい焦燥感に駆られたり、寂寥を感じたりということは、
あまりないんですよね。毎日は忙しいし、それでいっぱいいっぱいというか。

でもたぶん、これから先、「この人と残りの人生を過ごしたい」と思う人に出会ったとき、
きっと自分が孤独だったのだということに気づくのだろうと思うのです。
相手が欠けているのが普通の状態では、そんなことに気づきもしませんが、
自分が半分で、相手といることで一になったときに初めて、
その相手がいなかったときの自分の孤独を実感するのではないでしょうか。

モードもジョーも、年齢は明かされていませんが、まあ結構ないい年で、
大人として、しっかりと地に足がついて生活している人たちだ。
お互いに頑固だし、自分のやり方もあるし、時に寂しく思うことはあっても、
二人にはクリスティやグロリアがいて、本当に一人というわけではないので、
その孤独感もやや薄まっていたのではないだろうか。だがこの旅で、
ミランダと出会い、最悪の第一印象を抱いていたお互いを再発見する機会に恵まれ、
「人といる心地よさ」を彼らは感じたのでしょうね。

一人って確かにつまらないこともあるけど、慣れてる人にとっては快適で、
そこに安らぎを感じることもよくあります。そんな人にとっては、
人といるということが少し窮屈で、心配だったりもするのですが、
人の立てる物音や声の起こす細波の心地よさを忘れていたりもする。
そう感じられる相手に出会えたということが、彼らにとって幸せだったのだと思います。
そしてそれを取り持ったのは、世界で一番イノセントな存在である赤ちゃん。
素敵なお話でした。

加藤さんと阿知波さんの頑固な二人のやり取りはほほえましくもあり、
不器用な二人が見ていてかわいらしかったです。
前作に続いての登場の義宗くんは、今回のクリスティの役のほうが、
彼の雰囲気には似合っていたかなと思います。もしまた、
コミック・ポテンシャル」をやることがあったら、忍ちゃんの相手役、
アダムの役とかが似合うような気がしますね。そして高畑さん。
初めてだったのですが、よかったなと思います。そして、たくさんの役をこなされた
忍ちゃんと粟野さん。この二人が光っていたなと感じる舞台でした。

次回作は久しぶりに和もののようです(あとにさきだつ うたかたの)。
また来年も、素敵な舞台を期待しています。

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